おかげさまで、2017年5月15日に亘理町内の「WATALIS Shop&gallery」での営業を開始しました。
空き店舗をリノベーションし、工房も併設。はじめての自社店舗は、とても心地よい空間です。
「WATALIS・kinenbiプロジェクト」(弊社と一般社団法人日本記念日協会の共同プロジェクト)が運営する店内のgalleryでは、大型タペストリーも展示しています。
どうぞ足をお運びくださいね。

住所:亘理町字五日町32番地
営業時間:10:00~16:00
定休日:日、祝祭日
外部リンク:河北新報さんの記事


嬉しい気持ちとともに、これまでお世話になったたくさんの方々の顔が浮かんできます。
本当にありがとうございます。
今、心の中は感謝の気持ちでいっぱいです。

この機会に、改めて私たちの取り組みの原点を振り返り、WATALISブログをスタートしたいと思います。

「ふぐろ」が教えてくれたもの

2011年夏、亘理町内で民俗調査をしていた私は、ある農家で一つの巾着袋に出合いました。かつて亘理に暮らす女性たちは、着物の残り布で仕立てておいた巾着袋に1升のお米を入れて、お祝いやお返し、手土産にしていました。小さな布も大切にし、たくさん縫いためて、いつでもすぐに「ありがとう」の気持ちを手渡していたのです。米粒が縫い目に入らないよう裏地を付け、口がしっかり締まり中身がこぼれないように、ひもは両引きにします。渡す相手への細やかな配慮を込めて作っていたのです。

「ふくろ」がなまって「ふぐろ」。この「ふぐろ」が時間軸を超えて、自分とは異次元の「感謝を形にする生き方」を伝えてくれました。日々の暮らしの中で、小さなことにも感謝しながら生き、また次の感謝に出合う。毎日が感謝でいっぱいの幸せな生き方です。

3月11日に東日本大震災が起き、その数か月後に、実の父が病気で亡くなりました。それまで私にとって当たり前だった「安全で便利な暮らし」「家族も自分も、健康で生きている」こと。失ってみて初めて、ありがたさが分かりました。「近くにいるから、いつでも伝えられる」と軽く考えて、父に「育ててくれてありがとう」と言ったこともありません。もう会えなくなって、伝えたくても伝えられなくなって、やっと気持ちを形にすることの大切さに気付きました。

信じられない出来事が突然起きて、気持ちを切り替えるのに長い時間がかかっていた私。すぐに前向きになれないのがもどかしくて、いつまでも悲しんでいる自分に怒りさえ感じていました。それでも、いつか明るく前向きに生きられるようになりたいと願い続け、きっかけを探していました。そんな時だったからこそ、「ふぐろ」のストーリーが心に残りました。

それまでの自分の生き方を変えたい。「ふぐろ」に詰まった亘理の女性たちの暮らしや感謝を形にする生き方を受け継ぎ、伝えたい。そのために、「ふぐろ」をよみがえらせ、新しい形で世に送り出したい。そんな思いで被災した呉服店から着物地を譲り受け、妹と友人と一緒に製作を始めました。


時代が変わり、使う機会がなくなった昔の「ふぐろ」を、今の時代に合う商品にしようとアイデアを出し合い、工夫を凝らしました。
そして、新しい「FUGURO」が誕生しました。

これからも地元の文化を自らの生き方に重ね合わせながら、未来へ、次の世代へ伝え続けていきます。

引地 恵